【スカイ商事】カスタマーハラスメント対応方針
- Meihua Kim
- 8月6日
- 読了時間: 15分
更新日:9月8日
令和7年7月よりAIボイスレコーダ録音機を導入し「カスハラ対策に利用させて頂きます。 (スカイ商事株式会社)
1. カスタマーハラスメント対策の背景
(1) 近年、カスタマーハラスメントが深刻な課題となっています。厚生労働省「令和5年度職場のハラスメントに関する実態調査」では、過去3年間に「カスタマーハラスメントを受けた」と回答した労働者は全労働者のうち10.8%と、パワーハラスメントに次いで多い状況です。
東京都では、令和6年10月に「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」が成立し、都内で事業を行う事業者に対して、カスタマーハラスメントの防止に向けた措置が求められています。
令和6年12月に実施した社内アンケート調査においても、当社の従業員に対する著しい迷惑行為が確認されており、カスタマーハラスメント対策を強化することとしました。
(2) 組織的な対応の必要性
カスタマーハラスメントは、従業員に精神的・身体的苦痛を与え、その尊厳や人格を傷つける行為です。従業員一人ひとりをカスタマーハラスメントから守り、その能力を十分に発揮できるよう、良好な就業環境をつくることが重要です。
当社においては、現場の従業員任せにすることなく、あらかじめ統一的な対応方法を定めるなど、組織的なカスタマーハラスメント対策に取り組みます。
2.カスタマーハラスメントの定義
当社においては、カスタマーハラスメントを「顧客等から従業員に対して行われる著しい迷惑行為であって、従業員の就業環境を害するもの」と定義します。

(資料)東京都「カスタマー・ハラスメント防止のための各団体共通マニュアル」より「顧客等」とは、当社の商品やサービスを提供する顧客のほか、当社の事業に相当な関係を有する人、円滑な業務の遂行に当たって対応が必要な人を指します。
「従業員」とは、当社で働く人全てを指します。役員、正社員のほか、外部の委託スタッフや契約社員も含まれ、当社の事業活動に密接に関わる業務委託先のスタッフなども該当します。
「著しい迷惑行為」とは、以下のような行為を指します。ただし、あくまで例示であり、これらに限られるものではありません。(実例は社内アンケート調査に基づくもの)
【著しい迷惑行為の例】
• 暴言、侮辱、誹謗中傷
(例:注文時のイメージと違うという理由で「詐欺だ」「嘘つきだ」「返品しろ」と繰り返し罵られる)
• 長時間の拘束
(例:発送ミスのクレームで、「親子関係が壊れた、責任を取れ」と親子で電話を代わりながら1時間以上説教される)
• 合理性を欠く不当・過剰な要求
(例:商品発送後に、根拠もなく「商品で被害を受けた」と弁償を求められ、従業員が深刻なストレスを感じる)
• 威嚇、脅迫SNSでの名誉毀損
(例:返品を断った際に「ネット上に拡散してやる」と脅されたり、酷い口コミで従業員に心理的な負担を与える)
• 社会通念を超えた対応の強要
(例:夜間や休日にも即座の返答、返品、返金を求めるメッセージと電話が何十件も届く)
「就業環境を害する」とは、従業員が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、就業環境が不快なものとなったため、従業員が業務を遂行する上で看過できない程度の支障が生じることを指します。
判断に当たっては、平均的な就業者が同様の状況で当該行為を受けた場合、社会一般の就業者が業務を遂行する上で看過できない程度の支障が生じたと感じる行為であるかどうかを基準とします。
3 カスタマーハラスメントに対する基本方針
当社においては、以下の「カスタマーハラスメントに対する基本方針」に基づき、カスタマーハラスメントに対して、組織として適切に対応します。また、この基本方針を社内・社外に広く周知します。
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スカイ商事株式会社「カスタマーハラスメントに対する基本方針」
1.はじめに
当社は、「高品質な商品とサービスで快適且つ豊かな暮らしをサポートする」という基本理念の下、安心して使える商品とサービスを提供するため、お客様の要望に真摯に対応し、より満足度の高いサービスの提供に向けて取り組んでいます。また、お客様からお寄せいただくご意見・ご要望は、当社のサービスの改善・品質向上において、大変貴重な機会と考えております。
一方、一部のお客様の要求や言動の中には、従業員の人格を否定する暴言、脅迫、暴力など、従業員の尊厳を傷つけるものもございます。こうした社会通念に照らして著しく不当である行為は、従業員の就業環境を悪化させるだけでなく、安全・安心なサービスの提供にも悪影響を及ぼしかねない重大な問題であります。
従業員の安全な就業環境を確保することで、従業員が安心して業務に取り組むことが可能となり、ひいては、お客様との関係をより良いものとすることにつながると考え、スカイ商事株式会社における「カスタマーハラスメントに対する基本方針」を定めました。
2.当社におけるカスタマーハラスメントの定義
当社では、カスタマーハラスメントを「お客様から従業員に対して行われる著しい迷惑行為であって、従業員の就業環境を害するもの」と定義します。
具体的には、以下のような行為を指します。あくまで例示であり、これらに限られるものではありません。
• 暴言、侮辱、誹謗中傷
注文イメージと違うとの理由で「詐欺」「嘘つき」と人格を否定する暴言を吐く。
• 長時間の拘束
長時間と繰り返しの電話とメールでクレーム発信
• 合理性を欠く不当・過剰な要求
根拠のないクレームと弁償を求める。
• 威嚇、脅迫SNSでの名誉毀損
ネット上への拡散脅迫と酷い口コミで従業員の心身にダメージを与える
• 社会通念を超えた対応の強要
休日の対応を求める。
3.カスタマーハラスメントへの対応(社内)
・カスタマーハラスメントを受けた場合、従業員のケアを最優先します。
・従業員に対して、カスタマーハラスメントに関する知識・対処方法の研修を行います。
・カスタマーハラスメントに関する相談窓口の設置や警察・弁護士等の連携など体制を整備します。
4.カスタマーハラスメントへの対応(社外)
・問題解決に当たっては、合理的かつ理性的な話し合いを行いますが、当社でカスタマーハラスメントに該当すると判断した場合、対応を打ち切り、以降のサービスの提供をお断りする場合があります。
・さらに、悪質と判断した場合、警察や外部の専門家(弁護士等)と連携の上、毅然と対応します。
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4 顧客対応の考え方
(1)基本的な心構え
顧客等から寄せられるクレームの全てがカスタマーハラスメントではありません。
商品やサービスの品質に関する指摘、接客態度の不満など、正当なクレームは、業務の改善、新たな商品やサービスの開発につながる貴重な機会でもあります。
クレームに対する従業員の適切でない言動が端緒となって、カスタマーハラスメントを発生させている可能性もあります。
当社においては、以下の基本的な心構えに基づき、適切な顧客対応を実現します。
① 気持ちを理解して傾聴する
・顧客等と良好な関係を築くため、相手の気持ちを理解する。
・ストレス・不安・不満など、顧客等の背景を推し測る傾聴を行う。
② 誠実に対応する
・第一印象が重要であり、言葉遣いなどに注意する。
・不誠実な言動をしたり顧客等をクレーマー扱いしたりしない。
③ 共感を伝える
・相手との共感を深める上で効果的な「あいづち」を活用する。
・具体的には、「なるほど」「よくわかります」「そうなのですね」など、声に出して傾聴する姿勢を見せる。
④ 限定的な謝罪を行う
・責任が不明確な初期段階では対象を限定した謝罪を有効に活用する。
・具体的には、「ご心配をおかけし(ご不快な思いをおかけし)申し訳ありません」と謝罪する。
⑤ 素早し対応を心かける
・当社のミスであれば、素直に認め、真摯且つスピーディーな対応を心かける。
・お客様の要望を確認し、必要な処理を真っ先に行う。
⑥ 対応者を代わる
・相手の怒りが収まらない場合、躊躇せず別の担当者や上位者に代わる。
・対応する従業員が感情的になって対応を代わらないことは避ける。
・自分が全て悪いと思わない、執拗に人格を責める言葉を真正面から受け止めない。
(2)クレームの初期対応
当社においては、カスタマーハラスメントを未然に防止するため、顧客等のクレームの初期段階で、以下のとおり対応します。
① 顧客等に寄り添う
・商品・サービスの不具合等を起因とした顧客等からの商品交換や代替サービスの提供等の要求自体は、社会通念上妥当であり、真摯に受け止める。
・傾聴し、時には寄り添いながら顧客等の主張を正確に聞き取る。
② 要求内容を特定する
・要求内容を明確に特定した上で、議論を限定する。
・特定した要求内容を踏まえ、対応の可否を検討する。
・電話でのクレーム対応の場合、顧客等の氏名や連絡先等を確認し、可能な範囲で特定する。要求内容を聞いた上で、同じ内容を復唱し、要求内容を特定する。
③ 事実関係を確認する
・5W1H(※)により正確な事実関係を確認する。
※When(いつ)/Where(どこで)/Who(誰が)/What(何を)/Why(なぜ)/How(どのように)
・事実を確認しないまま、顧客等の要求内容を認める発言はしない。
・事実関係の確認前の段階では限定的な謝罪(例:お客様に嫌なお気持ちを与えてしまい誠に申し訳ございません。)にとどめる。
・組織的な調査・確認が必要である場合は、必要な調査等を行った上で回答する旨を顧客等に伝える。
・調査・確認に時間を要する場合、具体的な日数(例:〇日間、〇週間程度)を伝える。
④ 複数人で対応する
・組織で対応することを明確にするため、原則、複数人(※)で対応する。
※顧客等が複数の場合、できる限り同数以上の複数人
※顧客等が多数の場合、必要最小限の人数(対応する従業員数以下)に制限して対応
・役割分担(応対、記録等)を定め、各自が役割を遂行する。
・訪問でのクレーム対応の場合、カスタマーハラスメントの発生を未然に防止するため、複数人で訪問する。不測の事態が発生した場合に早急な援助を期待できないことから、単独行動を取らない。
・電話でのクレーム対応の場合、初期対応した従業員による対応を原則としつつ、顧客等の要求が著しく相当性を欠く内容であれば、1人で抱え込まず対応者を上司に代わる。
⑤ 対応場所を選定する
・原則、事務所や店舗のオープンスペースで対応する。
・やむを得ない場合、次の措置を講じた上で、会議室等で対応する。
✓ 密室状態にしない。ドアを開けて室内の状況を周囲が確認できるようにする。
✓ すぐに退室できるように、従業員は出入口側に着席する。
✓ 退去しない場合に不退去とみなすため、管理権の範囲内の場所(例:執務室内の会議室)を選定する。
・顧客等を訪問してクレーム対応する場合、可能な限り、顧客等の自宅やオフィスでの対応は避ける。難しい場合、第三者がいる場所で対応する。
⑥ 対応内容を記録・情報共有する
・顧客等への対応内容を可能な限り詳細に記録する。
・対応内容は速やかに部署内で情報共有する。
・顧客との電話での会話を録音(※)する。
※トラブルを避けるため、事前承諾を得ることが望ましいが、同意を得ない録音でも直ちに違法ではないとされる。
・顧客等が同じ話を何度も繰り返す場合、記録を基にいつ、何回、何を回答(説明)しているかを具体的に伝え、経過を把握して対応していることを示す。
・インターネット上のクレーム対応時は、書き込まれた内容を正確に記録し証拠として残す。記録内容は、投稿者の属性、対応年月日・時間、要求内容、対応状況などで、投稿者のプロフィールやリンク、関連するやり取りも保存する。
・SNSの投稿やメッセージはすぐに削除される可能性があるため、スクリーンショット等を活用し保存する。
(3)顧客等の権利の尊重
顧客対応に当たっては、消費者基本法で規定される消費者の権利など、顧客等の権利を十分尊重した対応が求められます。ただし、顧客等にどのような背景や事情があっても、「暴力や暴言などの行為に耐える必要はない」ことは当然です。
また、令和6年4月1日から、事業者による障害のある人への合理的配慮の提供が義務化されており、基本的な考え方を理解しておく必要があります。
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(参考)政府広報オンラインHPより抜粋
○不当な差別的取扱いとは?
➢ 障害のある人に対して、正当な理由なく、障害を理由として、財・サービスや 各種機会の提供を拒否したり、サービスなどの提供に当たって場所や時間帯を制限したりするなど、障害のない人と異なる取扱いをして障害のある人を不利に扱うことをいいます。障害者差別解消法では「不当な差別的取扱い」を禁止しています。
○「合理的配慮の提供」とは?
➢ 社会生活において提供されている設備やサービスなどは障害のない人には簡単に利用できる一方で、障害のある人にとっては利用が難しく、結果として障害のある人の活動を制限してしまっている場合があります。このような、障害のある人にとっての社会的なバリアについて、個々の場面で障害のある人から「社会的なバリアを取り除いてほしい」という意思が示された場合には、その実施に伴う負担が過重でない範囲で、バリアを取り除くために必要かつ合理的な対応をすることとされています。これを「合理的配慮の提供」といいます。
○合理的配慮の範囲
➢ 合理的配慮は事業者等の事務や事業の目的・内容・機能に照らし、次の三つを満たすものでなくてはなりません。
1. 必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること。
2. 障害のない人との比較において、同等の機会の提供を受けるためのものであること。
3. 事務・事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないこと。
➢ また、先述のとおり合理的配慮の提供については、その提供に伴う負担が過重でないことも要件となります。
○「過重な負担」かどうかの判断は?
➢ 合理的配慮の提供が、各事業者にとって「過重な負担」かどうかの判断は、以下の要素などを考慮して、個別の事案ごとに具体的な場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要です。
1. 事務・事業への影響の程度(事務・事業の目的・内容・機能を損なうか否か)
2. 実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)
3. 費用・負担の程度
4. 事務・事業規模財政・財務状況
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5 カスタマーハラスメントへの対応
(1)カスタマーハラスメントの判断
当社においては、「2 カスタマーハラスメントの定義」に基づき、従業員の就業環境が害されるような顧客等による著しい迷惑行為があった場合、カスタマーハラスメントとして毅然とした対応を行います。
カスタマーハラスメントの判断に当たっては、①要求態様、②要求内容、③時間・回数・頻度に着目し、従業員の就業環境を害する行為であるか検討します。
なお、これらは絶対的な基準や目安ではなく、機械的な運用や判断とならないよう留意が必要です。
① 要求態様
・侮辱的な暴言、差別的・性的な言動、暴力や脅迫を伴う苦情か
(例)詐欺、噓つき、ゴミ、馬鹿、死ね、・・・など
・恐怖心を与えるような口調、大声、個人を攻撃する意図がある要求等か
(例)SNSに拡散する、口コミ・悪評価を投稿する・・・など
② 要求内容
・不当な返品・返金の要求があるか
(例)返品しろ、返金しろ・・・など
・過剰な謝罪の要求があるか
(例)新品を本日中に届けて・・・など
・不当な責任追及・弁償の要求があるか
(例)責任取れ、弁償しろ、医療費出せ・・・など
・書面での謝罪の要求があるか
・従業員の解雇の要求があるか
(例)〇〇さんを解雇しろ・・・など
③ 時間・回数・頻度
・著しい迷惑行為(大声を上げ続けるなど)が「5分」を超えているか
※侮辱的・差別的・性的な言動は時間の長さに限らず判断
・「3回」誹謗中傷の中止を命令したにも関わらず続けているか
・対応できない要求が「3回」に渡って続いているか
・業務時間外である早朝・深夜に苦情の電話があるか
(2)カスタマーハラスメントへの対応の流れ
個別の事情を十分に配慮し、真摯かつ丁寧に対応したにも関わらず、著しい迷惑行為が収まらない場合、現場監督者を含め、組織的な対応に移行します。
① 一次対応者(対応従業員)の判断
・顧客等のクレームが止まらない、大声を上げ続ける、悪質な口コミと脅迫を続けるなどの迷惑行為が続く場合、行為の中止を求めるとともに、対応を中断の上、複数人での対応、やり取りの記録(録音、画面キャプチャ含む)など、組織的な対応に移行する。
・カスタマーハラスメントの可能性があると判断した場合、役員や監督者へ報告の上、対応の中止を含めた方針を相談する。
② 二次対応者(役員・監督者)の判断
・一次対応者からの報告を踏まえ、顧客等からも聞き取りを行う。
・カスタマーハラスメントに該当すると判断した場合、対応を代わる。
・一次対応者と顧客等を引き離し、従業員の被害を最小限にする。
・「組織としての回答であること」 「説明を尽くしていること」「これ以上の議論はできないこと」を顧客等に伝達する。
・このまま対応を継続すると業務に支障が生じると判断した場合、対応の中止を検討する。
③ 警告・行為中止の命令
・役員及び監督者は、膠着状態に陥って「5分」を目安に対応を中止し、顧客等に伝達する。それでも迷惑行為が続く場合、警告の上、行為の中止を命令する。
・それでもなお、顧客等が暴言・誹謗中傷を中止しない場合、最終警告の上、従わない場合は警察への通報を検討する。
(3)警察との連携
カスタマーハラスメントは、違法性のある迷惑行為であれば刑法等に抵触します。
当社においては、こうした行為が見られた場合、以下のとおり、警察と連携して厳正に対処することとします。
① 対応の中止を伝える
・従業員の心理的負担を考慮し、対応の中止を顧客等に伝える。
・対応の中止は役員を含めた複数名で判断する。
② 行為の中止を求める
・迷惑行為を止めるよう顧客に2,3度繰り返し伝える。
③ 警察に通報する
・繰り返し誹謗中傷や暴言を中止することを命じても止めない場合、最終警告する。
・なお中止しない場合、警察に通報する。
※所轄警察署、♯9110(警察相談専用電話)
⑤ 警察官に状況を説明する
・警察官にこれまでの状況を説明し、画面キャプチャ・録音がある場合は、内容を確認してもらう。
・迷惑行為を行う顧客を指導するよう依頼する。













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